ホルモン投与は、宗教のようだ。
信じる者に福音を与えてくれるが、
傍目には滑稽で奇怪なものにしか映らない
| ホルモン剤の種類と入手方法 |
| 経口薬 |
わたしが過去に、産婦人科や美容外科で処方された女性ホルモンには、結合型エストロゲン(卵胞ホルモン)、酢酸メドロキシプロゲステロン(合成黄体ホルモン)、卵胞及び黄体ホルモンの混合製剤と、エチニルエストラジオール系製剤の卵胞ホルモンの4種類がありました。
以下、その特徴を表にしてみました。
一般名 薬効区分(小) 製品名 会社名 規格単位 感想 結合型エストロゲン 卵胞ホルモン プレマリン 東洋醸造 1.25mg H 酢酸メドロキシプロゲステロン 合成黄体ホルモン プロベラ 住友 0.25mg H 混合ホルモン 卵胞及び黄体混合ホルモン エデュレン サール 不明 H エチニルエストラジオール 卵胞ホルモン プロセキソール 帝国臓器 0.5mg H
| 注射薬 |
わたしが今まで投与された注射薬で、製品名が分かっているのは、以下の一種のみです。これ以外にも3カ所でホルモン注射を受けていますが、同一のものか、違うものかも不明です。板橋にある某産婦人科で受けた注射は、胸の膨らみより肌に張りが出て、キメも細やかになるので、レポートしたいところですが、製品名等が不明なのでここでは割愛させていただきました。
一般名 薬効区分(小) 製品名 会社名 規格単位 感想 吉草酸エストラジオール 卵胞及び黄体ホルモン剤 プロギノンデポー 日本シエーリング 10mg H
| 接種及び入手方法 |
はっきり言って、東京在住の方なら非常に簡単にホルモン注射の接種やホルモン製剤を入手することができます。
法制上、男性にホルモンを投与することがどのようになっているのか、わたしには全く分かりませんが、以下の病院で、わたしはホルモン投薬を受けることができました。
名称 所在地 カウンセリング 検査 保険診療 利用期間 銀座美容外科 中央区銀座1丁目 若干あり なし × 95/12〜97/5 直塚産婦人科 板橋区板橋1丁目 若干あり なし × 96/7〜98/1 花園医院 新宿区新宿1丁目 なし なし × 98/5〜98/12、99/5〜 大久保病院 新宿区大久保(閉鎖) なし なし × 96/9 これ以外にも、新宿を中心にかなりの数の病院でホルモン投与を受けることができるようです。
いずれの病院も受付で「ホルモン注射をしてください」と言うだけで、特別な検査等は一切ありませんでした。
ただし、銀座美容外科と直塚産婦人科の2軒では、投薬前に、「女性ホルモンを投薬してどうなりたいのか?」といった簡単な質問がありました。
また、この2軒は、比較的こちらの質問や体調などの相談にも乗ってくれます。肝心の費用は、個々の説明は避けますが、わたしの場合、保険診療ではありませんでしたので、全額負担でした。
具体的には注射が1本につき1500円〜8000円。錠剤が21日分でやはり2000円〜6000円とかなりばらつきがあります。注射や錠剤そのものの代金だけでなく、カウンセリング料などを含んだものとしてもかなり差があります。月額にすると1万円ですむところから4万円までの開きがあり、毎月のこととなると、予算としっかり照らし合わせて病院を選択したいところです。接種を受ける前に、受付や電話でよく相談しましょう。
保険診療を希望する人は、精神科などの専門の医療機関に相談するのがいいでしょう。わたしはよく知りません。
| 作用と副作用 |
わたしが新宿へ遊びに行くようになった頃から、ホルモン投与することが半ば当たり前のように女装子の間に広まりました。
「あの子がやっているから私も」とか
「ホルモンやればもっともっと女らしくなれるかしら?」
といった軽い気持ちで、次から次へとホルモンが伝染し、流行のようになってしまいました。
身体を内部から変えてしまうといったことに関しても、みんなで渡れば怖くないで、あまり罪悪感や反作用を考えずにホルモンに走る人が少なくないようです。かく言うわたしも、「衣服を女物にしたんだから、次は身体を女に近づけるのは当たり前」といった軽い気持ちで女装ホルモンの投与を開始しました。
ところが、実際女性ホルモンを接種・服用してみると、それまで気が付かなかった様々な問題が、目の前に噴出してきたのです。
まず、目に見えて胸が膨らみます。のみならず、乳首や乳輪が黒ずみ大きく目立ってきます、かなり女の子みたいになってきますから、温泉などやレントゲン撮影など、裸にならなくてはいけない場面で、いかに胸のふくらみをごまかすかといった問題も出てきます。
わたしの場合、会社や友人といった周囲の人には、早いうちにカミングアウトしていたので、そういった問題はほとんどありませんでしたが、実家に帰って、父親と温泉に行った時とか、やはり後ろめたさを感じずにはいられませんでした。うれしい誤算というか、予想外の作用としては、髪の毛がどんどん濃くなったことです。わたしは、遺伝的にちょっと頭の頂上が「薄く」なりかけていたのですが、女性ホルモンを飲み始めて、2〜3ヶ月で、周囲の友人からも「お前、最近髪濃くなってねー?」とか言われるようになりました。
地毛で女装する上で、髪が薄くなるってのは、ある意味致命的でもありますから、これはうれしいことでした。
反面、ホルモンを中断すると、「また毛が薄くなるのではないか?」という恐怖感にとらわれて、止めることができなくなってしまったのも事実です。加えて、嘔吐感や倦怠感といった肉体的な副作用。そして、「私は本当は女の子なのに」といった勘違いのトランスセクシャリズム。誰かに守ってほしい、受動的でいたいといった甘え、感情のコントロールが効かない。といったメンタル面での変化が現れました。
全てを薬のせいにはしたくありませんが、投薬量を減らしたり、薬の種類を変えることで、解消できた問題も少なくありませんから、やはり薬の影響が多大だったと見てさしつかえないでしょう。このような諸問題をどのように解決していくかの道筋を立ててからホルモン投与を受けるのが、実際には望ましいのですが、気が先に走っている人に何を言っても「馬の耳になんとか」でしょうから、「なるべく不幸にならないホルモン投与を受けてね」とだけ言っておきます。
女性ホルモンが男性の身体にどのような影響を及ぼすかについては、お医者さんもあまりデータを持っていないのが実状です。
”ピルブック”などに副作用などが書かれていますが、あれはあくまで正規の投与対象者でのデータですので、私たち女装子にはあまり参考にならないと考えてよさそうです。よく知られているところでは、肝臓への負担や血栓ができやすくなる、情緒不安定、倦怠感、あらゆる意欲の低下などが報告されていますが、女装スナックなどに出入りしている人なら、周囲の女装者で女性ホルモンを接種している人などを観察して、自分もやるべきかどうかの判断材料にするといいでしょう。
以下は、実際に女性ホルモンをしている女装者の言葉です。これから女性ホルモンを始めようとしている人は、この2つの言葉をよくかみしめて、実行に移してください。
「女性ホルモンはタバコと同じ。できることなら知らずに一生過ごした方が、幸せだと思います。また、女性ホルモンでは真の女らしさは手に入りません」
「女性ホルモンをしたことやその結果、身体が変化したことは後悔していないが、やめられないでいる自分を後悔している」
| 製品別解説 |
わたしが実際に飲んだり、注射したものの感想を述べてみました。あくまで、私個人の私見ですので、ご自分で投薬なされる場合は自分の責任でやってちょうだいね。
| プレマリン |
0.625mgの白い錠剤と1.25mgの橙色の錠剤の2種類があって、いずれも中身は同じみたいです。
始めは白い方の錠剤を2月ほど服用していましたが、あまり効いた気がしないので、別の病院で橙色の方を処方してもらい、現在も日に1錠服用しています。
圧倒的な効果は期待できませんが、現在の胸の膨らみを維持することは可能です。
この薬を処方する病院が多いことから、女装者の間では最も一般的な女装ホルモンとして知られています。効き目や副作用に関しては、大方わたしの場合と変わらないようです。嘔吐感、倦怠感といった副作用は、他の錠剤に比べてほとんどありません。ただし、日に2錠以上を1週間ほど続けると、少々だるさを感じ、寝起きが悪くなるようです。
| プロベラ |
プロセキソール>を処方してもらっていた病院で、もし気分が悪くなるようなら、これも服用してくださいと言われてもらってました。
ホルモンバランスの崩れを緩和する目的の副投薬だったようですが、正直言ってあまり効果はありませんでした。単一服用をしたことがないので、効果や副作用については不明です。
| エデュレン |
比較的穏やかに効く薬のようで、胸の膨らみや体型変化には影響がありませんでした。フィジカル面での効果より服用していることで安心感を得たいメンタル派にはおすすめかも。
わたし的には副作用もほとんどありませんが、人によっては、吐き気や倦怠感など精神的にブルーになったりすることがあるようです。
「薬品副作用要覧」などを見ると、臨床的には、肝臓への負担などが比較的多く報告されているようです。
| プロセキソール |
はっきり言ってかなり効きます。わたしは日に1錠服用していましたが、まず、乳首が大きくなって、かなり女性化します。乳輪も徐々に黒ずみますので、乳首の色にこだわる人は注意した方がいいでしょう。
乳房全体もかなり、ふっくらとしてきます。肩の付け根から乳房全体にかけて、常に張った感じがします。服用を半年続けた段階で、とうとう白い母乳(父乳?)が出ました。
加えて、胸だけでなく、足や太もも、尻まわりといった場所にかなり肉が付き、身体全体が丸みを帯びます。
服用中は声も心なしか半オクターブほど上がったような気がしました。このように書くといいことづくめのようですが、反面副作用も強く、かなり強い嘔吐感、倦怠感、身体の冷え・しびれを感じます。中でも嘔吐感は強く、わたしは服用を半年続けた段階で、ほとんど毎日のように吐きました。
また、精神的なダメージも強く、かなり情緒不安定になり、泣いたり笑ったりと感情の起伏が激しく、自分でコントロールすることもままなりませんでした。ハッキリ言って「気がふれた状態」になります。
一応そのような副作用を緩和させるための副投薬もしてもらいましたが、わたしにはあまり効果がありませんでした。
あまり長期間服用すると、仕事や生活面での意欲さえなくしてしまう恐れが大きく、わたし的には、全くおすすめできません。
ある意味においては、メンタル、フィジカル両面で最も女性化できる魔法の薬ということができますが、反面社会に適応できなくなる悪魔の薬ということもできるでしょう。反面、臨床例では、わたしが知る女性ホルモンの中で、最も肝臓への負担が少ない薬のようでもあります。
| プロギノンデポー |
1999年1月現在、月に1回のペースで接種を受けている女性ホルモン注射です。
接種した日から数日間は、少し倦怠感や情緒不安定を感じますが、3〜4日で解消します。病院の担当医によると週1回ほど接種しないとあまり効果がないとのことですが、そのペースで注射をうち続けると、身体が重く感じ、倦怠感から仕事に支障をきたす恐れがあるので、肉体的な効果より、ホルモン投与を続けているという安心感を得る目的のために月1ペースを守るようにしています。
同様の意見を言う、女装子も何人もいます。
反面、肉体的な効果を狙って、週1回どころか、週2回のペースで接種を受ける人や、1回に2本の接種を受ける人も少なからずいるようです。確かに胸そのものは大きくなるようですが、果たして、メンタル部分でのマイナス面への変化は、周囲の目にも明らかなことが多いようです。